大学ファンド創設準備中
欧米諸国の教育・研究機関では、潤沢な研究費をもとに先進的な(もしくは基礎的な)研究を競って行っています。さてその研究費用はどこから捻出しているのかというと、彼ら自身で大学への寄付金を基金、原資として市場で運用した運用益を充てているのです。彼らの投資アセットの構成の平均値は、米国株式55%、米国債券20%+オルタナ投資が少々、という超攻撃的なもの。その活動はもう、最前線バリバリの機関投資家のものです。彼らの基金はおそらく年平均10%程度の運用益を毎年上げ続けていることが想像されます。およそ教育機関の基金とは思えないようなアグレッシブな運用で莫大な利益を重ね、それを研究費につぎ込んでいるのが、現代の欧米の教育・研究機関の実体なのです。
一方で、なけなし寄付金や公的機関の補助を毎年消耗しながら何とかやりくりしようとしているのが日本国内の大学。これでは資金力の段階で大幅に差が付くのは自明です。日本の研究力が落ちぶれているのは、大学の質がどうとか少子高齢化がどうとかいう以前の問題、端的に言えば「お金がないから」です。
こんな事態を何とかしようと、遅ればせながら日本においても、日本版大学ファンドの運用を開始すべく、検討が開始されたようです。初期投資額は10兆円程度とのこと。これを欧米の基金並みの攻撃的なアセット運用に回すというのだから、そこから得られる期待収益はとんでもない金額に・・・仮に10%運用できたとすると、年1兆円。因みに文部省の大学向けの年間予算が1兆円強なので、運用が正常に回るようになれば、これが倍近くになる計算です。
預金金利がほぼ0の弊害がこんなところにも出ている、とも言えるかと思いますが、文句を言っていても始まらず。
日本の科学技術の発展を一身に担うファンドになっていくことを、お祈りしましょう・・・いや、多分大丈夫ですよ。今まで大丈夫だったし。GPIFだって成功しているしね。
あー、そこで「投資なんて汚れた(!?)お金、そんなもので大学を運営するなんて・・・」とか言ってる時代錯誤の人たち、だったら君たちが全国の大学・研究所の運営資金1兆円を毎年負担してあげてくださいね。というか日本では年金も保険もその投資運用益で回しているのですが、そういった制度も利用しないでくださいな。
研究者側が「産学連携」なんて癒着の温床みたいな構造に縋りつくしかない現状に比べて、グローバル市場でフェアに稼いだ利益を、しがらみのない状態で研究に使うほうが、よほどキレイというか、公平性が保てると思いますよ。