アセットアロケーション効果を可視化してみた

2021年5月16日 オフ 投稿者: おじさんプログラマ

ほったらかし長期投資家は必見です

長期投資で資産形成をやりたい、でも投資って大切なお金を無くしそうで怖い!暴落怖い!ヘッジショート?信用取引?なんだかわからんけどとにかく怖い!・・・と感じる方は少なくないかと思います。そういった方にお勧めの手法として、「アセットアロケーション投資」という考え方があります。具体的に言うと、価格変動の相関性の低い、あるいは逆相関のアセットを組み合わせて分散投資することで、あるアセットの暴落が資産全体に及ぼす効果をマイルドにすることができる・・・ということなのですが、多分「とにかく怖い!」系の人にはなんのこっちゃかわからない、となるような気がします。

そこで、このアセットアロケーション投資の効果がどれほど強力なものかを、Portfolio Visualizerツールを用いて可視化してみる、というのが今回の記事の内容です。こちらをご覧いただければ「とにかく怖い!」系の人もある程度安心してほったらかし投資に臨むことができるのではないでしょうか。


Portfolio Visualizer

上記は、これから検証する2つのポートフォリオの資産配分です。その1は以前紹介したレイ・ダリオ流超安全ポートフォリオ、その2は多くの方が採用しているであろう「S&P500または全米株式100%」ポートフォリオです。ただし前者については、コモディティの価格推移の昔のデータがツール上にないので、その部分をゴールドに置き換えました。まあ、この程度の変更で結果は大して変わらないです。
この2つのポートフォリオに初期投資3万$、月間1200$、年一回のリバランスをする設定で30年のバックテスト(30年前に投資を始めていたら今どうなっていたか、のテスト)をしてみます。

それぞれのポートフォリオのパフォーマンスは、以下のようになります。

  • 超安全ポートフォリオ・・・年平均リターン8.46%、標準偏差(リスク)6.59%、シャープレシオ0.89
  • 全米株式100%ポートフォリオ・・・年平均リターン11.05%、リスク14.89%、シャープレシオ0.62

そしてそれぞれのポートフォリオによる資産推移グラフは以下の通り。前者は30年で約600万$(6.5億円)、後者は同じく約1100万$(12億円)になっています。まあどちらもとんでもない数字ですよね。ですがこの手の話は何度もしていますし、今回のテーマにとってはたいして重要なことではありません。一つだけ、最近の米国株の好調ぶりにより直近5年程度の2つのポートフォリオのパフォーマンスに大きな差がありますが、それまではたいして変わらない点には注意が必要です。

それぞれのポートフォリオの年単位でのリターンをグラフにしてみたものが、以下になります。
2002年前後のITバブル崩壊、2008年のリーマンショックで、株式100%ポートフォリオはなかなかヤバいことになっていますが、一方で超安全ポートフォリオはそれらの年ですら若干のプラスであるという、非常に興味深い結果が出ています。というか超安全ポートフォリオって過去30年で年次リターンがマイナスになることが殆ど無かったのですよね。いやはや素晴らしい。

上記のグラフは年単位でのリターンというアウトプットのため、若干表現がマイルドになりますが、次のグラフは当時の投資家の心の傷の深さをダイレクトに表現できるであろう、なかなかにエグいグラフになります。恐怖の最大ドローダウンのグラフです。

ドローダウンとは、直近の資産の最大額に対しての減少幅のみを取り出したものです。例えば1000万円まで成長していた資産額が600万円まで減ったらドローダウン-40%ということです。株式などのアセットは暴落の後は回復のフェーズがありますが、たとえば800万円まで回復した時点では、グラフ上でまだドローダウン-20%、という表現をします。資産額が1000万円まで回復して初めて、ドローダウンが0%のラインに復活する、ということですね。

ここで見ていただきたいのは、2003年前後のITバブル崩壊および2008年のリーマンショックでの、全米株式100%ポートフォリオ(Portfolio 2の赤線グラフ)の傷の深さと回復までの長さです。-40%を超えるほどの深い谷間、そして現状回復するまでの数年の期間・・・これらと同じような株式の暴落が今後10年、20年の間に発生しない保障は全くありません。というか、むしろ確率的には1回2回程度は起こると考えたほうが良いです。

多くのYoutubeやブログにて「長期投資は全米株式100%をバイアンドホールドでOK!暴落?そのうち回復するから気にしなければいいよ!」といった論調が見受けられます。が、結果としてはそうであるとしても、この谷間、もしあなたが当時の投資家だったとして本当に耐えられると思いますか?個人的な感想としては、これを耐えられるのは(私のような)頭のネジが1,2本抜けている人だけじゃないかと思っちゃうのですよね。

そしてもう一つ見ていただきたいのは、株価暴落時における超安全ポートフォリオのドローダウン(Portfolio1の青線グラフ)の推移です。株式100%ポートフォリオとは比較にならないほど傷が浅いのは、一目瞭然ですよね。リーマンショック時に一瞬-10%を超えるのが目立つくらいで、他の期間ではせいぜい-5%程度、2020年のコロナショックに至っては-2%程度しかありません。私が昨年8月から始めた投資で-5%程度の下落なんて、昨年後半にも、今年に入ってからもありましたよ。「まあそういうこともあるよね」で済む程度のかすり傷、という数値ではないでしょうか。

こちらの表は、投資期間中の任意の期間を切り取ったそれぞれのポートフォリオでの最大、最小リターンと、3年間リターンの変動グラフです。これらの情報は、全米株式100%ポートフォリオは運が悪いと10年リターンがマイナスになるが、一方で超安全ポートフォリオは3年あればどれだけ運の悪い期間でもプラスになる、ということを示しています。いやー、超安全ポートフォリオ、すごいですよね。


個人的には、世界経済危機レベルの暴落にあったらヘッジショートで緊急回避しておけばよいだけだと思いますので、最大ドローダウンが30%でも40%でも気にしなくて良いかと思っています。ですが、ヘッジ取引なんて怖い、ヘッジ取引なんかやりたくない、そもそも株式相場なんか見ていたくない、という人も多いでしょう。相場情報を常時監視する・・・というのは、それが趣味もしくは仕事であるなら別にして、人生的な意味では時間の無駄だと思いますし、他にやりたいことがあるならそちらに注力したほうが良いですよね。そういった方は、超安全ポートフォリオのようなアセットアロケーション分散投資を考えることが重要になると思います。

・・・え、それも難しいって?であれば、とりあえずは超安全ポートフォリオをパクっておけばOKですよ。あるいは、株式40%、米国長期債40%、金20%という、より簡単な防御的ポートフォリオでも、似たような結果になりますのでおすすめです。ある程度似たような構成にしておけば、結果はそれほど変わりません。あとは個人の工夫次第ということで。

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