債券投資の意味を考える

2021年5月9日 オフ 投稿者: おじさんプログラマ

利息はおまけでしかありません

防御的なポートフォリオを組む際に必ず名前が挙がってくる「債券」ですが、現状の利回りは米国10年債で1.6%前後、日本国10年債に至っては0.1%以下。普段の価格変動もほとんどなく、一見すると「こんなもの買う意味あるの?」という疑問を持つような商品です。そのため多くの方が、「買う意味の分からない債券なんか買うより、多少暴落のリスクがあっても株式に全張りしたほうがなんぼかマシじゃないの?」と考えているような気がします。

しかし債券投資を行う主たる理由は利息ではありません。非常事態で株式と逆相関を示す価格変動が、経済危機などによる株式暴落時の傷を埋め、株式暴落相場での大儲けのチャンスを増やすアセットである、ということです。


経済危機で暴騰する商品、その名は米国債

2008年のリーマンショックの際、米国株式は年間トータルで-35%以上の大暴落となりました。また、他の先進国株式や新興国も傷はより深いもので、リスク資産市場は1年以上総悲観モードが継続しました。しかしそんな中、唯一米国債だけはそれらの価格変動とは真逆の変動を示しました。例えば米国超長期債の2008年のパフォーマンスは+20%の高騰となったのです。このパフォーマンスは、主に価格上昇(=債券利率の大幅な下落)によるものです。

今回のコロナショック後の各国政府および中央銀行の振る舞いを見てもわかる通り、経済危機が発生するとその悪影響を少しでも減らすため、国債の大量発行による金融緩和、それと合わせて国債の大量買い付けによる国債金利の低位置への固定操作を実施します。その結果、通常モードにある債券利率はその瞬間から大幅に下落し、それにともなって債券価格が暴騰するのです。債券の暴騰は、政治が経済の恒常性を少しでも保とうとする結果発生する、ごく当然の反応なのですよね。

2008年時点でもし株式50%、米国長期国債50%のポートフォリオを持っていたとした場合、資本主義の終焉もささやかれた超重大ショックであったにもかかわらず、その投資家は単純なバイアンドホールドにて年トータルパフォーマンスを-5%程度で納めることが出来たそうです。

ということで、若干金利が付くこと+経済危機時に価格が暴騰することの2点のメリットから、株式の下落リスクにさらせない余剰資金はとりあえず米国債にいれておくのがよさそうです。株式に少なくない資金を投下している投資家ほど、後者のもたらすメリットは大きくなるのではないでしょうか。


米国債以外は今はちょっと・・・

因みに、日本国債およびドイツ等の欧米先進国債は現在ほぼ0金利になっており、そのため価格上昇の余地がありません。それではいざというときの暴騰メリットを享受することが期待できないので、はっきり言ってリスク軽減の目的では購入する意味がありません。一方で新興国債はデフォルトによる暴落リスクが常に付きまとうため、全く安全資産ではありません。

ということで、現状リスク軽減を目的とした債券投資の投資先として唯一機能するのは米国債のみになっています。この目的で債券を買う際は、今は米国債だけが選択肢になるので注意ください。東証上場のETFでも米国債は購入できますが、投資信託一本槍の人は先進国債券インデックス投資信託でも、その50%近くは米国債で構成されているはずですので、同様の機能を期待できると思います。

ひとつ気になることが。最近投資の教科書的な何かを見たからなのか、盲目的に日本国債を少なくない割合で購入している方をそこここで散見します。ですが、私には正直何がしたいのかよくわからないのですよね・・・価格の上昇余地が無いのに下落リスクだけ無尽蔵(直近ではあまり考えられませんが、先々日銀がテーパリングを始めたら一気に金利が上がり、価格が下がるはず)、その上利息ほぼ0の欠陥商品にしか見えないのですが・・・日本国債を買うくらいなら、現金で良いんじゃないですか?

もし私が日本国債を買うとしたら、テーパリングが行われて債券価格が暴落した後ですかねえ。もともと日本円で生活している人間ですので、できれば無リスク資産は日本国債で運用したいのは当然のところでして。

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