長期投資にレバレッジは禁物
ここで書くのは個人的な感想です。記述内容に一切の保証はありませんので、宜しくお願いします。投資は常に自己責任ですよ!
(2020/3/20)ちょっと加筆しました。
そういう投資信託も人気のようですが
皆さん「分散投資でリスクを軽減」という話を聞くことは多いと思いますが、これは感覚的なものではなく、投資理論に基づく厳格なルールなのですよね。一方で、一部の投資信託には分散投資に逆行するレバレッジ投資を行えるものがありますが、これを利用するのは一方的な上昇または下降の相場が続くことに賭ける行為であって、上下動を繰り返すことを想定した長期投資には全く向いていないようです・・・ということについて、私の理解を説明していきます。
リスク≒価格変動幅
一般的に「リスク」というと危険性みたいな意味でとらえられることが多いですが、投資の世界ではむしろ価格変動の振れ幅のことを指している文脈が多いと思います。例えば「ハイリスク」というのは「とてもアブナイ」というわけではなくて「振れ幅が大きい=運が良ければ儲かりますよ」という意味になります。ハイリスクであること自体は、大きな問題ではないのですよね。
リスク軽減の本質的な意味と”逓減効果”の罠
具体的な例示をしてみましょう。ここに、年間リスク22%、平均年間期待リターン7%の投資信託があると仮定します。つまりこの商品は高確率で1年で-15%~+29%という範囲内で価格が上下することを意味します。
ちなみにこの数字、皆さん大好きな米国株ETFの過去歴史から見た大まかな期待値になります。平均リターン7%ってすごいですよね・・・
さて、この商品の最近の値上がりに目を付け、信用取引を用いて2倍、3倍のレバレッジを掛ける投資信託が新たに販売されました。これらの商品の期待値は以下のようになるでしょう。
● レバレッジ1倍:リスク22% リターン7% (年間 -15%~+29%)
● レバレッジ2倍:リスク44% リターン14% (年間 -30%~+58%)
● レバレッジ3倍:リスク66% リターン21% (年間 -45%~+87%)
仮にこれらの商品にそれぞれ同一の金額、例えば100万円を投資し、初年度に最悪のシナリオである年間-15%の暴落を引いてしまい、翌年に平均リターンの約3倍である+20%を引いて回復した・・・といった状況を考えてみます。これって時々ありそうなシナリオですよね。結果はこうなります。
● レバレッジ1倍:1年目 85万円、2年目 102万円
● レバレッジ2倍:1年目 70万円、2年目 98万円
● レバレッジ3倍:1年目 55万円、2年目 88万円
・・・おわかりでしょうか?レバレッジ1倍はリターンがプラスですが、レバレッジ2倍、3倍はリターンマイナスです。こういった上下動が続く相場があった場合、レバレッジ商品の価格はどんどん下がっていきます。リスクが2倍、3倍に対してリターン2倍、3倍では割に合わないのです。
これ、専門用語で逓減効果というそうです。レバレッジ投資信託やETFにおける逓減効果は、なんと1日単位で発生します。これは例えば、一定期間ボックス相場で上げ下げしている指標に対するレバレッジ投資信託を購入した場合、対象となる指標の結果的な価値がプラスマイナス0であったとしても、レバレッジ投資信託の資産価値はどんどん減っていく、ということになります。
一つの指標が一方向に動き続ける期間など、ごく限られていることが当たり前ですが、その期間を超えてこういった金融商品を長期保有することに価値はありません。
レバレッジ投資の意味
レバレッジ投資自体には意味がないとは思いませんが、これは原則としてブル・ベアどちらか方向への順張り+短期売買が前提になると思います。そのため、注文から約定までに一定のタイムラグがある投資信託で、日単位で逓減効果が発生するのにレバレッジを掛けるというのは、正直それをする意味がよくわからないです。(どうせレバレッジを掛けるなら信用取引をするほうがなんぼかマシ、理解可能です。)
またこれらを買うということは、ほったらかしにできない短期投資への参加になるので、投資家自身の時間的コストや精神的負担のことも考える必要が出てきます。個々人のリスク許容度次第ではありますが、少なくともほったらかし投資志向の方にとって適切な商品ではありません。
なんでそんなものが売っているの?
理由は簡単「売れるから」ですよ。売った後のことは「買った人の自己責任」です。投資家目線での利益保護の考え方はそこにはない。あくまで購入者本人の勉強不足のせい。ほんま、投資業界は悪辣やで。