シャープレシオを上げたい
シャープレシオ=リターン/リスク
シャープレシオは、投資プランの質に関する評価指数です。リスクが高いプランだと数値が下がり、リターンが高いプランだと数値が上がります。リターンとリスク両方が1次の計算式ということは、この式は「リターンを上げることと同じくらい、リスクを下げるって重要ですよ」という意図を含んでいます。
リスク低減の効果
上記の画像、前者は「私のまったり投資計画」の簡単な20年シミュレーションの結果、後者は同じく「私のまったり投資計画に対して、年リターンの1%程度を保険料として支払うことで、仮にリスクを1/2に低減させることに成功した場合」の20年シミュレーションの結果です。
なお、「私のまったり投資計画」のリスク・リターンの算出については以下の記事を参照ください。
ご覧になるとわかる通り、前者と後者で平均評価額はそれほど変わりませんが、前者は元本割れ確率が4%あるのに対し、後者はほぼ0になります。また前者では下位10%ですと利益は微々たるものですが、後者では下位10%でも1000万円以上の利益がでています。
ギャンブルではなくて「資産形成」を目的とした投資をしている前提では「運が悪くてもそこそこの利益がちゃんと確保できる」という後者のプランのほうが、前者に比べてはるかに優秀です。
因みに前者のプランはシャープレシオ0.48、後者のプランは同じく0.82。シャープレシオが投資プランの優秀さをどの程度示す値であるかがわかるかと思います。
そもそもリスクって何?
投資におけるリスクの値、その意味を知るには統計学を勉強するとよいのですが、ここではもうちょっと直観的にわかりやすいアプローチを考えてみようと思います。
皆さん、学生時代に自分の成績を測る指標として「偏差値」という値を利用していたのは記憶にあるかと思います。この数値、ざっくりいうとこんな分布になっています。
- 偏差値50なら平均的
- 偏差値60なら6人に1人くらいの成績良い人
- 偏差値70ならクラスに一人くらいの秀才
- 偏差値80なら学年に一人いるかいないかの天才
これ、実は試験の点数のばらつき具合よらず、常にこういった人数構成になるように調整された値なのです。正確には50を平均値として以下のように計算されます。
- 40~60に収まる確率が約68%
- 30~70に収まる確率が約95%
- 20~80に収まる確率が約99.8%
さて、偏差値の数字がどのように割り出されるのかイメージが出来たところで、投資におけるリスクの値の話が出てきます。このリスクの値とは「偏差値50と偏差値60の間の点数の開き」のことを指すものです。なお投資の世界の話ですので、ここでいう点数はリターンの値そのものにあたります。
「私のまったり投資計画」は(年平均)リターン6.8%、リスク14.1%ですので、これの具体的な年毎のリターンのばらつき具合の期待値は以下の通り。
- 6.8±14.1%に収まる確率が約68%
- 6.8±28.2%に収まる確率が約95%
- 6.8±42.3%に収まる確率が約99.8%
もうちょっとかみ砕いて書くと、こんな感じになります。
- 大体3年に1度くらいのペースで、-8%~+20%の範囲を上下どちらかに飛び出すことがある
(=時々そうなるけどあんまりならない) - 大体20年に1度くらいのペースで、-22%~+34%の範囲を上下どちらかに飛び出すことがある
(=長期投資の全期間の中で1回あるかどうかというところ) - 大体500年に1度くらいのペースで、-36%~+48%の範囲を上下どちらかに飛び出すことがある
(=おそらく生きている間に遭遇することはなさそう)
この計算が出来れば、リスクの値に応じて、どの程度酷い目に遭う可能性があるかを具体的に想像できるようになります。精神の安定のためにも、この辺はある程度理解されるとよいと思いますよ。
リスクが低いということは、「偏差値50と60の間の点数の開きが少ない」ということで、イコール「毎年高い確率で偏差値50に近い点数が取れるようになる」、言い換えれば複利効果の大敵である「マイナスリターン」年次の発生を抑えることができる、ということになります。その結果が前述のシミュレーションのとおり、多少リターンが低くてもリスクが極端に低ければトータルでお得になるわけです。
シャープレシオは高ければ良いの?
この世界で最もシャープレシオが高い投資は「銀行預金」もしくは「日本国債購入」ですね。リターンは0.0X%という超低率ながらリスクは実質ゼロ(これらが元本割れするときは日本と日本円がエライことになっている時ですので、考えても仕方ない)、ゆえにシャープレシオは無限大です。
掃いて捨てるほどお金がある人にとっては、もしかしたら銀行預金も美味しい投資なのかもしれませんね。もし手元に1000億円あったら、年利0.01%でもノーリスクで毎年1000万円入ってくるわけですから。
しかし私のような微々たるお金しか持っていない人がお金を殖やそうとする場合は、どうしてもリスクを取らなければならない。不公平ではありますが、それが資本主義の社会というもの。言っても仕方がないので、そこで戦うしかありません。つまりは、投資家各々がリスクとリターンを見比べて、自分が「この位なら良いかな」という落としどころを探すしかないわけですね。